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【現地レポート】シューターは一瞬に賭ける (男子準々決勝)

 チャンスは文字どおり一瞬しかない。その瞬間を逃せば、また振り出しから始めなければならない。シーホース三河の⑭金丸晃輔はそんな40分を過ごした――。

 天皇杯2019のファイナルラウンド男子準々決勝。アルバルク東京と対戦した三河は55-73で敗れた。
「よくないですね」
 自身の出来を聞かれて、金丸はボソリとそう答えた。
「チーム全体としてもよくない。何をしたいかが見えない試合でした」
その言葉どおり、最後まで自分たちのリズムをつかめないまま、三河は今大会から去ることになってしまった。

 三河といえば前身のアイシン精機時代を含めて9度、天皇杯を手中にした名門チームだ。そのなかには2度の4連覇も含まれている。昨年の第93回大会も優勝こそ逃したが、決勝戦まで勝ち上がっている。しかし今シーズンはポイントガードの橋本竜馬とシューティングガードの比江島慎がともにチームを去った。ベテランの桜木ジェイアールは残っているものの、金丸にかかる負担が重くなったことは想像に難くない。

 しかも彼はリーグを代表するシューターである。当然、相手チームからのマークはほかの選手と比べても厳しくなる。A東京でいえば⑬菊地祥平、⑩ザック・バランスキーといったフィジカル自慢のディフェンダーがその任に当たり、身体能力に長けた⑥馬場雄大までも金丸にボールを持たせないよう、ぴったりと張り付いた。
 むろん金丸もそんなことは百も承知だ。
「僕はスクリーンを使ってオフェンスを始めるタイプ。どんなにいいディフェンスが来てもスクリーンを使えばシュートは打てるんです」
 しかし、今日のゲームではシュートを打つシーンさえも作れなかった。A東京のディフェンスがよかったこともある。一方で金丸は三河自体にも問題があったと認める。
「スクリーンを使ってボールを受けるとなると(パスを出す)ポイントガードと(スクリーナーになる)インサイド陣との共通理解が必要なんです。今日はそれがまったく見られませんでした。それどころか、出ているメンバーの誰を生かさなければいけないのか、今どこがストロングポイントなのかを全然理解できていなかった。だから単純な1対1で終わったり、パスして終わりという悪い流れで、こんな大差のゲームになってしまったんです。特別指定選手はチームに合流してまだ日が浅いので、そうしたコンビネーションがわからないのは、仕方がない部分もあるんですけどね」
 11月15日に㉚岡田侑大が加わり、12月20日には⑪熊谷航も加わった。彼らのような生きのいい若手が入ってくるのはいい。チームの未来につながるからだ。しかしそれは“今”にとって両刃の剣でもある。彼らと同じユニットで練習する時間はほとんどなく、ポイントガードの熊谷は「今日がぶっつけ本番だった」と言う。
 いくらリーグを代表するシューターであっても、ひとりでシュートシーンを生み出すことはできない。ディフェンスのレベルが上がれば上がるほど、それを崩すためのコンビネーションを求められるが、それを生み出す時間があまりにも少なすぎたのだろう。

 盟友ともいうべき橋本、比江島が移籍したことを恨むのではない。彼らが去ったことで厳しいシーズンになることは、他ならぬ金丸自身が誰よりも覚悟していた。しかし、だからこそ、何とかしたかった。悔しさがないわけでないが、今はこの負けを受け止めて、チームとしていかに成長していくかを考えるほかに進む道はない。
 ゲームの行方がほぼ見え始めた第4クォーター中盤、金丸はそれでも一瞬のチャンスでボールを受け、3ポイントシュートを2本放った。1本目は相手のファウルとなってスリーショットにつなげ、2本目はネットを揺らした。そのシーンを金丸が振り返る。
「空いたら打つと決めているので、それをしただけです」
 チャンスを何度見逃されたとしても集中を切らすわけにはいかない。シューターは常にその一瞬を待ちながら、ひたすらにプレーし続けている。

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