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【現地レポート】チームとともに成熟していくエースの次なる一歩 (女子準々決勝)

 クイックネスのあるガードがいて、スコアリング能力の高いシューターがいる。185センチを超すビッグマンも2人いて、ベンチに目をやれば、実力のあるシックスマンたちがいる。三菱電機コアラーズはそんなバランスのとれたチームだ。しかも彼女たちは3シーズン、ほぼ同じメンバー構成でチームを築いている。チームが成熟し、Wリーグでも前半戦を終えた時点で3位につけているのもけっしてフロックではない。

 その三菱電機が皇后杯2019の準々決勝で、トヨタ自動車アンテロープスと対戦した。Wリーグの現在の順位を見れば、三菱電機の3位に対して、トヨタ自動車は2位。このゲームは準々決勝のなかで最も白熱したものになると予想されてもいた。むろん皇后杯はそのキャッチコピーにもあるとおり「心に響く、一発勝負」である。リーグの順位がゲーム展開や、結果に直接つながるわけではない。
 それでもやはり白熱しそうだと予想されるのは、上記のとおり三菱電機が3シーズンを通してチームを成熟させてきているからだ。女子日本代表選手を複数抱えるトヨタ自動車に対しても十分に競り合える力をつけている。

「昨年よりも、一昨年よりも総合力がアップしているのは自分たちでも感じている」
 チームの変化をそう語るのはエースの#45渡邉亜弥だ。この試合でもチームトップタイの17得点をあげているが、一方でチームトップの6アシストもあげている。そこにも三菱電機の成熟の跡が見える。
「同じメンバーでやって3年目。今までは自分がやらなきゃという気持ちでプレーしていました。でも今はチームの総合力も高いし、パスを出したら決めてくれると信頼してパスを出せています。自分だけが攻めるのではなく、自分にディフェンスが寄ってきたときに味方を信頼してパスを出すようにしています」
 その言葉どおり、第3クォーターの序盤、トヨタ自動車に逆転されたときでも渡邉はスクリーンプレーからダイブしたセンターにパスを出した。これまでの渡邉なら自分で攻めることを選択していただろうが、渡邊はそれを選択せずに結果としてセンターのフリースローを引き出している。

 その一方で16点差を追う第4クォーターの序盤には渡邉自身が3ポイントシュートと、1対1からのフェイドアウェーシュートを決めるなど、チームに勢いをもたらすアタックも忘れなかった。
「今日はピック&ロールからのジャンプシュートがそれほど入っていなかったんですけど、自分が弱気なプレーを見せたり、攻める姿勢がなくしてしまうとチームが不安になると思うんです。だから、たとえ自分のシュートが入らなくても打ち続けよう、誰かが必ずリバウンドに入ってくれると信じて打ち続けていました」
 チームの成熟はエースの成熟をももたらすのだ。

 第4クォーターの残り7分23秒、三菱電機は16点ビハインドの場面から渡邊の3ポイントシュートをきっかけに6分間で1点差にまで詰め寄った。しかし逆転へのもう一歩が出ず、70-79で敗れた。5大会ぶりの皇后杯ベスト4には届かなかった。
 渡邊はチームの成長を認めつつ、「課題も山ほどある」と言う。この試合の敗因でもあるイージーシュートの精度を上げることもひとつだが、リバウンドもそのひとつ。リーグ屈指のビッグマンを擁し、高さで引けを取ることはないが、高さだけではだめだと渡邉は言うわけだ。

「大事な場面……たとえばフリースローの後のリバウンドを見てしまって、相手にスッと入られて、そこから流れが変わってしまうところがあるんです。高さで取れるときももちろんありますが、必ずしもそれだけがリバウンドの勝敗を決めるわけではありません。リバウンドに対する集中を1試合通して持ち続けることができるか。それも自分たちの課題です」

 1試合を通してやりきる――それはチームだけでなく、渡邊自身の課題でもある。その課題を克服したとき、チームはさらに成熟し、それとともにエースもさらに円熟味を増していく。

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