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【現地レポート】チャンピオンチームのメンタリティー  -大会総評に代えて-

 第93回天皇杯と第84回皇后杯の頂点に立ったのは、今年も同じ顔ぶれだった。男子は千葉ジェッツが3連覇(3回目)、女子はJX-ENEOSサンフラワーズが6連覇(23回目)を達成した。千葉県を拠点とする両チームによるアベック優勝も3年連続であり、勝って当たり前という空気が流れている。しかし、大会キャッチフレーズでもあった『心に響く、一発勝負。』のトーナメントを勝ち抜くのはけっして容易ではない。

 JX-ENEOSは、これまでとは違うスケジュールでの戦いを強いられた。これまでは前年度優勝の立場で常に第1シードであり、つまりそれは常に第1試合に登場し、次の試合に備える時間が確保されていたということである。しかし、今年は違った。大会のレギュレーションによって初戦の準々決勝はナイトゲームだった。さいたまスーパーアリーナを後にしたのが21:15頃。宿泊先へ移動し、夕飯を食べてからケアを行い、就寝は日をまたぐ時間となる。試合直後は興奮しており、思うように眠りにつけない選手もいた。勝ち上がる毎に試合時間が早くなる3連戦だったが、「この苦しい中で優勝したら本当に強いチームになれる」と自らに発破をかける。この6年間の結果こそ変わっていないが、その準備や苦労は毎年異なり、裏側には様々な努力や葛藤があった。

「私がヘッドコーチになったのは7年前。そのときからバスケットボールのスタイルを変えていないことが勝利につながっているのではないか」と佐藤清美ヘッドコーチは6連覇の要因を挙げる。この3年間、決勝戦の相手はいずれも違うチームであり、JX-ENEOS自身も戦力が変化している。昨年の決勝戦はケガのため藤岡麻菜美はコートに立てず、梅沢カディシャ樹奈の出番が回ってきたのは試合が決まった残り3分だった。その彼女たちが、今年は先発で起用されている。異なる状況ながらも自らのスタイルを貫いたからこそ、変わらぬ強さを証明することができた。

 皇后杯6連覇、Wリーグは10連覇と優勝を積み重ねる絶対女王は、常に追われる立場である。そのJX-ENEOSが掲げるハードルはどこに設定しているのだろうか。佐藤ヘッドコーチのコメントから、JX-ENEOSの強さを垣間見ることができた。
「日本ではこのメンバーでも大きいチームですが、やはり世界に出れば走らないと太刀打ちできません。それをこのチームから作っていこうと思って取り組んでいます」
 優勝直後のインタビューでは、喜びの声よりも反省点を多く挙げる選手たちのストイックさに付け入る隙は感じられない。

「3試合全てにおいて、相手のリズムでの戦いが続いた」と大野篤史ヘッドコーチが振り返る千葉ジェッツは、綱渡りの試合が続いた。準々決勝の川崎ブレイブサンダース戦は終盤に追い上げられる中、66-63で辛くも逃げ切る。準決勝はマイケル・パーカーが残り0.5秒で逆転シュートをねじ込み、80-79でアルバルク東京との激闘を制した。栃木ブレックスとの決勝も40分間では決着がつかず、延長戦にもつれ込む。1点ビハインドで迎えた残り3秒。「目の前にほんの少しでしたがスペースが空いた気がしました。残り時間やリバウンドのチャンスも含めて、少し早めに打ちたかったという気持ちもあり、シュートしました」と冷静かつ強気に放った富樫勇樹の3Pシュートがネットを揺らし、71-69で逆転勝利。3試合とも全てワンゴール差。厳しい接戦を勝ち抜いてたどり着いた3度目の頂点だった。

 大野ヘッドコーチは「諦めるヤツはチャンピオンになれない。ギブアップする選手が僕は嫌い」という信念を持つ。優勝を決めた最後の場面、「入るか入らないかは結果論。打つ気持ちがあるかどうかが大事だと僕は思っています。そのメンタリティーを持っている選手に最後は託したかった」と任せた富樫が、強いメンタリティーでその期待に応えて見せた。
 優勝できた要因として、「チームとしての団結力や勝ちたい、負けられないという思いが一番強かった。本当に我慢ができるようになった」と挙げている。「この3年間でのチームの成長を本当に実感しています」と大野ヘッドコーチは続け、ようやく自身のスタイルに自信を持つことができはじめた。

 天皇杯・皇后杯を制して得られるものは、チャンピオンの称号と賞金だけでない。その経験値や自信はかけがえのないものであり、それをつかめるのもたった1チームの覇者だけである。BリーグとWリーグはシーズン半ばであり、まだまだ戦いは続く。

 1月16日(水)、Bリーグ後半戦の一発目に、天皇杯決勝と同じ千葉vs栃木戦が待っている。今週末からWリーグも再開し、JX-ENEOSは皇后杯ベスト4チームとの戦いが続く。今回優勝したことで得た揺るぎない自信という鉄壁の鎧をまとい、真の日本一となるリーグ制覇へ向け、ふたたび走りはじめる。

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